HL-2K
東京ハイパワー、HL-2K、とにかく調子がわるいから、と修理依頼があった
はじめてのリニアアンプHL-2Kであるが、触りなれた3−500zまた、回路図もあるのでみてみることにした。


とりあえず、たまりにたまった、もはや綿みたいな厚いホコリをブロワーで除去

電源をONにしてみたら、瞬時に電源ヒューズが吹っ飛んだ...コリャー球がオシャカかな?
片方の3−500zがNGであった。高圧いれちゃうとプレートとグリッドがタッチみたい
   



手持ちの予備球を差し込んでスイッチONした。プレート電流のアイドルが300mA以上流れちゃう。
こりゃあ、バイアスのツエナーダイオードがイカレているねえ。

基盤をはぐって点検した。
ツエナーダオードは無事で、それの電力を担う2SC2555が吹っ飛んでいた。

ジャンク箱さがしたら、若干小さめだが、実験的に使用可能な2SC1945が基盤の上にあったので、もぎ取って利用...
とりあえず動作確認の仮設置...どこかで、もっとおおきな石を探してこなくちゃなあ


てな訳で、修理完了とおもったが、そうはいかなかった。どうも、グリッド電流計が流れず、どうもパワーがでないよ...なんでだ???
この時点で数時間たっていたのでメンドイ、気力がない!
今一度奮起!!!徹底的に点検したら、D-14とD-39がNG...

これまた、ジャンクのそれらしいダイオードをとっぱずして交換...
それにしてもジャンク基盤から無理やり、むしりとった素子のリード線って、やたら短いので交換は高等技術がいる。
けど、写真でもバレちゃうのだが、見栄えは最悪だねえ...

40mでテストした。余裕で1kwでちゃう。しかし、このアンプやたらプレート電圧が高いねえ。無負荷で3300V、負荷でも2900V
ドライブ100Wいれたら1500W近くパワー計振っちゃうのねえ!くやしいがTL922より、できがいい!?



このままの電圧でRTTYやCWだと球によくない。そこで、電圧を下げるべき手段を探るためトランスのタップじっくり観察...
すると2次側の巻き線に電圧の低いタップがある、また1次側に100Vの他に110V、117Vのタップ...
      
1次側だと比較的簡単に電圧の変更可能。
2次側の巻き数から洞察すると1000V程度低下となる。あまり、電圧下げちゃうと、「パワーがでない」とオーナーからクレームがきそう。
以上を考慮して、1次側で対処した。
写真のようにトランス一次側から100V、110V、117Vの線6本を新たに設置して、端子で簡単に切り替えられるようにした。
これならば、現状の電圧からupもdownも即座に可能だ。

トランスのタップ110Vへ変更したら無負荷で3100V、負荷2700V、「うん、これでちょうどいい電圧になった」
これでも楽々1kW以上でる...これならオーナーにバレないかな!?

これ不良部品である

仮設置の石が小さ目なのでジャンクさがしたが大き目の石がなかった。、
そこでネット通販で探した、意外と2SC2555がないのね。
マルツパーツ館にあった。この店、結構いろんなパーツある、また、夕方ネット注文したら数時間後に発送
翌日到着というスピーディーには驚いた。クレジット決済が利用できるのも気に入りました。


今回のトラブル原因とバイアス、ツエナーの解説

 3-500zのたいがいの不調は、プレートとグリッドがタッチしちゃいます。その際は、HL-2Kの場合はF5のヒューズが切れる様になっている。
そんなこんなを何回も繰り返していると今回みたいにツエナーダイオード関連の部品がNGとなったり、本格的に球がイカレルと電源ヒューズがとびます。
TL-922の場合は、グリッドのRFCが切れたり、ツエナーダイオードがNGとなります。

左50w程度の大型ツエナー、右1wのツエナー


 通常(下図)AB間にツエナーダイオードをシンプルに挿入するのが理想なのだが、最近は数十Wの電力に耐え切れるようなツエナーダイオード
なんて、高価で簡単に手に入らない。そこで、どこでも売っている1Wクラスのツエナーダイオードに大きな石を抱き合わせちゃう。(計300円程度)
HL-2Kもその手法で2SC2555と11Vの小さなツエナーで構成してあった。
エミッターとベース間で0.6V程度あるだろうから、合計約-11.6Vのグリッドバイアスとなる。
TL-922は-7.5Vであるから、HL-2Kはかなり大きな値だね。おかげでプレートアイドル電流は100mA以下となり球にはやさしい...

※すでに自分のTL-922はツエナー部分は改造してあるのだが実験的に変更してみた。
  オリジナルの7.5Vから10.6V程度になった訳だが、結果的にプレート電流の動作が若干B級に近づき、アイドルIP約100mAで球、トランスにはソフト...
  元にも戻すのめいどいから、しばらくこの状態で使ってみよう...

今回のHL-2Kの修理で仕入れた部品
1w10Vツエナーと2SC2555のコンビ
をTL-922へ装着

NEC RD10F 73円
東芝 2SC2555 178円
マルツパーツ館

右:アイドルプレート電流 約100mA
左:高圧 約3kV

 今回初めてHL-2Kの回路図と現物をみたのだが、3-500z2本の性能をデスクトップリニアアンプとしてベストに設計してある。
ブリッジ整流の電源、グリッドバイアス約-11.6V、グリッド直接接地などの作りに感じる。
 対して同じ3-500z2本リニアアンプのTL−922はグリッドRFCやツエナー電圧7.5Vの設計は電波の質重視。
実際は、そんなのたいした意味がなくむしろ、-10V程度のグリッドバイアス動作、グリッドRFC除けてエキサイターのドライブ電力低減をして、入力同調回路や出力同調回路に気をつかった方が懸命と感じる。まあ、それぞれメーカーの設計背景、考え方なので...


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